大会を終えて

 通信大会が終わりました。予選から入れると,約2週間に及ぶ長丁場でした。特に決勝に進んだ学校の選手・監督,応援の生徒,それを支える保護者の方々,連日の緊張感の中,本当にお疲れさまでした。

 

 本大会は県総体が中止になり,選手,特に3年生に何かしてあげられることはないかということで企画を立ち上げました。通信大会は我々が高校生の頃(約25年前!),全日本弓道連盟が機関誌「弓道」の中で行なっていた企画です。当時は葉書での投稿,機関誌での結果発表でしたが,それをメールとホームページを使う現代版にアレンジしました。

 

 現代の高校生は参加してくれるか心配しましたが,予選は男子37チーム,女子41チームと通常の県総体とほぼ変わらない,多くの参加となりました。また,顧問の先生からのメールや投稿していただいた写真から,部員全員が協力してこの大会に真摯向き合っている姿を見させていただき,心から感動しました。熱い戦いを本当にありがとうございました。

 

 本大会を終わるにあたって,今回引退する3年生にどうしても伝えておきたいことが3つあります。

 

 ひとつは,弓は「自分との戦い」です。「己に勝つ者を怨みず,反ってこれを己に求むるのみ」です。でも考えてみてください。一人でここまで弓を引き続けてこれたでしょうか?苦しいとき,仲間がいたから弓を置くことを思いとどまったことはありませんか?顧問の先生から叱られて,立ち直ったことはありませんか?保護者から無言のサポートをたくさんいただきましたよね?弓は自分との戦いですが,いろいろな人との関りがあってこそこれまで弓を引けたと思います。お願いです。照れくさいかもしれませんが,いい機会だと思って感謝の気持ちを伝えましょう。

 

 2つ目。この大会を実現するにあたって,県弓道連盟はじめ本当にたくさんの大人たちが知恵と汗を出し合って開催できました。まだ君たちは想像もつかないかもしれませんが,ひとつの大会を行うには相当のエネルギーが必要なのです。また,開催を発表してから報道各社はじめ反響もすごかったです。これは何を意味するのでしょうか?あなたたちの痛みを少しでも理解しようとする大人たちがたくさんいるということです。彼らもかつて,同じように県総体に向けて必死に努力し,涙を流した経験があるのです。だからこそ「何とかしてあげたい」という思いを持ってくれたのです。新型コロナウィルス感染症の影響はいまだ先が見通せない状況です。これからも苦しいことがあるかもしれません。覚えておいて欲しいことは,そんなときに必ず寄り添ってくれる大人がいます。苦しいときはぜひ頼ってください。

 

 3つ目は,君たちが将来大人になったとき,今回の経験をいかして苦しんでいる人に寄り添える人になってほしいということです。今の君たちなら,人の痛みが分かる人になれていると思います。しかし,残念ながら「思い」だけでは力になることはできません。今,君たちがしなければならないことは勉強をするということです。就職や進学に向けて努力を始めていることと思います。これからはそれぞれの進路目標に向かって,妥協なく必死にがんばってください。今の努力が将来君たちを必要とする人の力になるはずです。

 

 最後に,この大会が君たちの有終の美を飾る大会になってくれれば幸いです。鹿児島で,高校生の時に,弓をしていてよかった,そう思ってくれることを切に願います。

 

鹿児島県高体連弓道専門部 委員長 大倉 一也

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